神経免疫軸における迷走神経

迷走神経の機能とその臨床的重要性

迷走神経は、約80%が求心性線維、20%が遠心性線維から構成される混合神経であり、脳と消化管(GI管)との双方向の通信を担っています。これは、神経免疫軸および脳腸軸において中心的な役割を果たします。

迷走神経には、以下の2つの抗炎症作用があります:

  1. HPA軸を介した抗炎症作用(求心性神経)
     迷走神経の求心性線維は、視床下部–下垂体–副腎(HPA)軸を刺激し、副腎からグルココルチコイドを分泌させることで、抗炎症作用を発揮します。

  2. コリン作動性抗炎症経路(CAP)を介した作用(遠心性神経)
     迷走神経の求心性線維と遠心性線維は、脳幹における統合的な神経反射を形成し、いわゆる炎症反射として知られます。これにより、**コリン作動性抗炎症経路(cholinergic anti-inflammatory pathway: CAP)**が活性化され、末梢での炎症反応を抑制します。


自律神経バランスと疾患の関連

自律神経のバランスは、以下のようなさまざまな疾患状態と密接に関係しています:

  • 過敏性腸症候群(IBS)

  • 炎症性腸疾患(IBD)

  • 関節リウマチ(RA) など

これらの疾患では、特に副交感神経活動の低下を伴う自律神経機能障害が認められます。慢性炎症性疾患の発症や進行にも深く関与していると考えられています。


臨床応用と最近の傾向

私たちのサロンでは、自律神経機能を測定し、それに応じて適切なセラピーを選択しています。迷走神経の活動が低下し、交感神経が優位になっている方には、以下のような症状が見られることがあります:

  • 不整脈

  • 心不全

  • 高血圧

  • 虚血/再灌流障害

これらはすべて、迷走神経機能の低下と交感神経活動の過剰病理学的に相関していることが、近年の研究で示されています。

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